ボストン美術館 浮世絵名品展 『北斎』
いつ以来だろうか・・・美術館に足を運ぶのは。
2012年8月に上野の西洋美術館へ「ベルリン国立美術館展」、東京都美術館へ「マウリッツハイス美術館展」に
はしごした以来ですが・・・
2年ぶりの美術館・・・
先日の21日に上野の森美術館へ「ボストン美術館 浮世絵名品展 北斎」を鑑賞しに行ってきました。
浮世絵師といえば
歌川広重、写楽、喜多川歌麿、そして葛飾北斎くらいしかわからない。
写楽と歌麿の違いは分かっても、たまに広重と北斎がごっちゃになることがあるくらい(笑)
ただ、どの浮世絵師が好きか?と、問われると私は
“葛飾北斎”が好きです。
理由は単純です。
私の住む土地が北斎の生誕の地でもあるからです。
特に北斎に興味を抱いたのは、
2012年10月に区役所内のギャラリーで開催された「北斎のバードアイ〜空からの江戸見物〜」を鑑賞してからです。
この時は北斎が流浪の旅で見てきた、日本各地の風景を鳥の目線で描いた浮世絵が中心でした。
そして、北斎の生まれ育った土地の風景を描いたもの。
説明によればボストン美術館の浮世絵は門外不出で、観る人もかなり厳しく制限されているらしいのです。
ですから、保存状態もかなりよくて初公開の名品ばかりが集まっている!ということで、生きている間にもう二度と見れる機会はないかも・・・
そんな思いに掻き立てられ行ってきました。
代表作『富嶽三十六景』や『諸国名橋奇覧』などもありました。
浮世絵は版画ですから、同じものもあるってことはわかります。何刷り目なのかで価値も変わってくるみたいなこととか・・・
しかし、明らかに今回の展示品は色鮮やかで大事に保管されてきたかがわかります。
北斎に限らず浮世絵師は自分の描きたいものだけではなく、人からの注文で作るものもあったりします。
今で言うパンフレット的なものもあったりして面白かったです。
また、ペーパークラフト的な切って折って貼り付けて、立体的にするという作品もありました。これにはびっくりしました。
今回も音声ガイドを聞きながら鑑賞したのですが、とても印象に残ったのは・・・
北斎の残した言葉
己 六才より物の形状を写の癖ありて 半百の此より数々画図を顕すといえども 七十年前画く所は実に取るに足るものなし
七十三才にして稍(やや)禽獣虫魚の骨格草木の出生を悟し得たり
故に八十六才にしては益々進み 九十才にして猶(なお)其(その)奥意を極め 一百歳にして正に神妙ならんか 百有十歳にしては一点一格にして生るがごとくならん
願わくは長寿の君子 予言の妄ならざるを見たまふべし
73歳になってやっといろいろなものが見えてきた。
だからおそらく、80代にして上達の兆しが見えて、90代で奥義を得て、100歳を超えれば命を得たような作品が描けるはず、と(予言)言っているのが、すごいの一言。
北斎(享年90歳)が亡くなる間際に言った言葉が
翁は大きく息をして『天があと10年の間、命長らえることを私に許されたなら』と言い、しばらくしてさらに、『天があと5年の間、命保つことを私に許されたなら、必ずやまさに本物といえる画工になり得たであろう』
芸術家としての貪欲さというか、自分の進化をもっと楽しみたかったという無念さが伝わってきます。それは、自ら予言していた自分の姿が確認できず残念だ・・・という表れのような気がしました。
北斎の作品はただ写実的であったり、事実だけを伝えようとするものとは違って、ドラマ仕立てであったり絵の中に主役がいる。
「富士山」だったり「瀧」だったり「橋」だったりです。
あとはそれらを表現するのに新しい技法を沢山取り入れてるのも、魅力の一つだと考えてます。人気に左右されないっていうのも北斎の素敵なところ。
まぁ、そんなこんなでこの展示会公式のガイド画集を買ってしまいました。
年譜を読みながらまた、ゆっくり楽しみたいと思います。