'MANIJU' 佐野元春&ザ・コヨーテバンド
『MANIJU』
佐野元春&ザ・コヨーテバンドによるオリジナルアルバム第4弾。
7月19日にリリースされて、早速聴いて・・・色々思った。毎日聴いて毎日、感想が変わる。実は最初はピンとこなかった。それは嫌いなサウンドとか嫌いなWritingだからと言うのではない。一瞬、遠い過去に戻されかと思えば、理想郷に迷い込んだり、現実に呼び戻されたり・・・聞いたことのある言葉と初めてのBeat。一回、通して聴いたら長旅から帰ったような疲労感が私に押し寄せた。
ピンとこなかったというよりは、あっけにとられた・・・という感じかも。
アルバムタイトル“MANIJU”の意味について元春は詳しい説明は避けて、一般的な意味合いとして、強いていうなら「自分のココロの中にある、誰にも触れさせたくない大切なモノ」と言った。解釈は聴いてくれた人が決めればいいと。
私はまず言葉の意味をさがした。聴いた者の解釈に任せるとはいっても、元春の作り出すアルバムにはだいたい“コンセプト”があるので、そのコンセプトから自分はどう感じたのか?を探りたかった。
どうやら仏教用語で漢字で書くと「摩尼珠」・・・この「摩尼」が竜王の脳中から出て、望みをすべてかなえるという珠玉のことらしい。悪を去り、濁水をきよらかにし、禍(わざわい)を去る徳をもつという。
あえて、ローマ字表記やカタカナ表記にしているので他にもないか調べたら、「マニ」は“預言者”という意味合いもあって、マニ教*1という今ではあまり知られていない宗教も存在した。その開祖が「マニ」という予言者だったという。そのマニ教の教義自体は当時の様々な宗教の教義を融合していたもので、その中の一つに“二元論”というのが登場する。「宇宙は光と闇、善と悪、精神と物質のそれぞれ2つの原理の対立に基づいている。」というもの。
これを踏まえて・・・元春はプロモーションで多くのラジヲ番組に出演していて、その中で触れられた話に
「街に暮らす少年に向けた音楽にしたかった・・・少年たちの心を注意深く観察すると聖なるものと、邪悪な物を見抜けるスキルが今も昔も少年には備わってる気がする。」
と、語っていました。私はその純粋で無垢な心こそが「摩尼」で誰にも触れさせたくない大切なものだと感じた。
そういう珠玉をもった若い人たちを、大人は守らなきゃいけないのではないか?そういう若者が暮らしやすい世界にすれば、彼らが混沌とした世界や汚れた大人の心を浄化する役割になるのではなかろうか?そんなことを思った。
そう考えながら聴いた時、元春に何かコンセプトがあったとしたら、このアルバムの私なりの捉え方が見えてきたのです。
冒頭で初聴きの感想が過去に戻ったり、理想郷に迷い込んだりと表現したけど、大人になって失いかけたり無くした、純粋な気持ちや理想というものを思い出し、現実に戻って良い方向に実現させなきゃ・・・という使命?・・・まぁ、これはかなり大袈裟ですけど・・・、今いる場所や立場でできることを一つづつ丁寧に取り組んで、「大切なモノ」を守り育みたいと思ったのです。もちろん自分の子供だったり家族だったり自分自身だったり・・・。誰にも見せられない「秘密」も大切なモノ。
アルバムジャケットの裏面には秘密の施しがされているという。ヒントを最後に書き記します。でも、裏にしてみないとみえません(笑)
本当は1曲づつ感じた事を綴りたいところですが・・・それってあまり私にとって意味がないような気がした。ライナーノーツを読むと一つの物語のようで、切り取って語ることができないのです。
ライナーノーツの最初の方にライダースジャケットを着た元春の写真。バックカラーが黄色。それは“SWEET16”の裏ジャケットの写真に似ていた。SWEET16の少年が行きたい場所にしるしをつけて、彼女をバイクの後ろに乗せて旅に出たあの日。今も彼女のための蜜を集めながら旅をしている。
新しい世界を作るために・・・そんな壮大なロードムービーが私の頭の中で展開しているのです。
'MANIJU'トラックリスト
- 白夜飛行- Midnight Sun
- 現実は見た目とは違う- The Mirror of Truth
- 天空バイク- Cosmic Bike
- 悟りの涙- (She’s not your) Steppin' Stone
- 詩人を撃つな- Dead Poets
- 朽ちたスズラン- Let's Forget
- 新しい雨- New Rain
- 蒼い鳥- My Bluebird
- 純恋(すみれ)- Sumire
- 夜間飛行- Night Flight
- 禅ビート- Zen Beat
- マニジュ- Maniju
【ヒント→】 私はその秘密を見つけ出すことができた。それはまるで珠玉が濁水を浄化した後のようだった・・・。