また、あした…

私が好きな音楽のことを綴るブログ

正午向嶋…私の徒然『新・正午浅草荷風小伝』を観て

2019年4月24日(水)『新・正午浅草荷風小伝』を観劇しました。

www.gekidanmingei.co.jp

このブログ内でも永井荷風をカテゴリーにしていくつか記事があります。

永井荷風に絡めた記事を記す理由も既出してますが、改めてお話ししますと…。

エレファントカシマシ宮本浩次永井荷風のファンで会ったという事から、調べていくうちに永井荷風が晩年、私の暮らしている街の辺りを気に入り心のよりどころにしていたことがわかり、小説『濹東(ぼくとう)綺譚 (岩波文庫)』がその舞台であると知り、『日和下駄 (講談社文芸文庫)』や『永井荷風という生き方 (集英社新書)』を買って読み…いつしか自分の興味関心になっていきました。

エレファントカシマシの宮本がどういう過程で永井荷風のファンになったか?それはわからないのだけど、彼は森鴎外の熱烈なファンでもあって永井荷風森鴎外を師と仰いでらしたので、その関連から荷風を知り荷風の魅力にも魅せられたのかしら?と思った。

かつて雑誌で紹介された宮本浩次の部屋には永井荷風の写真が飾られている。

 

さて、『新・正午浅草荷風小伝』ですがネットのリサーチ力のたまものか?私の好きそうな情報を広告で知らせてくれる。その中にこの観劇のチケット情報があがってきた。

私はお芝居というものを自ら進んで観に行ったことがない。よしもと新喜劇くらいです(笑)あとはお友達のお誘いで宝塚を数作品、黒栁徹子さんの「想い出カルテット」を観たことあるくらいです。それが初めて自ら観に行きたい!と、思いチケットを購入したのがこの『新・正午浅草荷風小伝』でした。

お芝居の舞台は荷風が晩年暮らした千葉県八幡の家での回想シーンですが、我が街に足を運んでいた場面も登場すると知ったからです。題名にもある「浅草」も私の散歩圏内。本を読んでその場所を廻ったりしますが、お芝居を通して観た時にまるで本物の荷風が現れ、その思い出の土地を語っているように見えて…どんな思いで下町を訪れていたのか?その機微の部分がリアルにつたわった思いがしました。

もちろん荷風の肉声は聞いたことはありませんが、きっとこんな風にお話しをし声をしていたのでは?と感じるほどでした。演じられた水谷貞夫氏は御年84歳、劇中の荷風は40代頃から亡くなるまで(79歳)の年齢。当時の79歳と現在の84歳はあまり変わらない気もして、荷風の雰囲気というものが画として見ることができたのは嬉しかったです。

ストーリーは二人の女性を中心に展開された。荷風のお妾だったという元新橋の芸子「お歌」、『濹東綺譚』に出てくる玉ノ井の娼婦「お雪」。この二人の女性の境遇と立場の違いから、荷風の中にある“女性像”というものが二種類対極に存在しそれが、真実味のある女の実態として如実に表わされていたと感じた。

その実態を知った時、荷風にとって女性というのは常にそばに居て欲しい者ではなく、「理想」の女性のままで存在してほしかったのだろう。そして、都合よく逃げ込める心地よい場所であってほしく、実際そうであったのだと思う。

最後、キャストの皆さんが登場し荷風を演じた水谷氏が出てきた瞬間、私の眼には涙が溢れた。お芝居を観て泣くなんて思いもしなかったので、自分でも驚いた…。正直、永井荷風の「断腸亭日乗」も読んでいないし、小説も「濹東綺譚」しか読んでおらず、もっぱら永井荷風の生きた軌跡に魅力を感じているだけの“にわか”にしかすぎない私が何故でしょうね…。

たぶん、人間の本質的な部分に魅力を感じてきたことや、その人間味という部分では冒頭で紹介した、私が大ファンのエレファントカシマシ宮本浩次と重なる部分を見出したからだと思います(歳を数えで言ってしまうとか、馴染みの女性の家に行っても泊まらず必ず帰宅するとか、そういう細かい部分も)。

 

彼は若い頃に作った『道』や『歴史』歌の中で「死にざまこそが生き様」と歌っている。劇中の荷風の台詞に

「生まれ方は選べない。人の手を借りなければできないけれども、死に方は選べるから」と、「鴎外先生の命日と同じは無理でも同じ“9”の付く日に死にたいなぁ」と、記者に話すシーンがあった。

私ももうじき53歳になります。プレ終活期に入ったと思ってます。荷風がやりたいことをやり始めた年頃と同じです。そして、そのやりたいことを52歳でやりはじめた宮本浩次とますます被って見えてしまったのです。

大きなことはできませんけれども私もできるだけやってみよう!行ってみよう!と思った事は行動に移していける生き方をこれからはしようと思っています。

まずはこのブログ記事でも記した通り、荷風ゆかりの場所を散策することがちょっとしたライフワークになるかと思ってます。

yumcha-elekashi.hatenadiary.com


この本を参考にしながら巡るつもりでおります。

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そして、ゆくゆくは終焉の地、八幡へも足を運べたらと調べものをゆっくりペースでやっております(笑)

いろいろな巡り合わせでこのお芝居とも出逢って、自分のこれからというものを再確認できるきっかけの良いお芝居でした。

「新・正午浅草―荷風小伝」 を観劇後、帰ってきてから早速、この本を開いてみる。お芝居の舞台となっている場所、晩年の荷風の様子がわかる一冊「荷風極楽」。

劇中にも出てくる、身の回りの世話をしてもらっていた女性がいるのですが本の最後の方に、荷風の葬儀後に撮られた関係者の集合写真が納められていて、そこにその方も写っていました。 その女性が荷風の遺体の第一発見者でした。

八幡編はこの「荷風極楽」が基本となりそうです。