また、あした…

私が好きな音楽のことを綴るブログ

『宮本浩次縦横無尽』東京ガーデンシアター@2021年6月12日

f:id:yumcha_low:20210614065721j:plain

東京ガーデンシアター

最近、葛飾北斎の映画を観ました。

5月28日に劇場公開された『HOKUSAI』と、それに先駆けて動画サイトで観た『北斎漫画』です。

映画を鵜呑みに北斎の人物像は語れませんが、両方の葛飾北斎を照らし合わせ、共通項を探ると、一生を自問自答し夢を追い求め、旅に出かけ、90歳になってもなお絵を探求し続ける生き様が、実に不器用でじれったくも感じました。

しかし、それがあったからこそ世界に名を馳せた、世界屈指の名絵師となる由縁だと実感させられます。

北斎は机上の空論で旅をしたのでなく、精神の中の旅でもなく、本当に自分の描きたい世界を求めて旅に歩いた男でした。

北斎は大器晩成だったため記録的な物があまりなく、世界的に有名でありながらその半生は実に謎に満ちています。

LIVEレポを記録する前に、なぜこれを書いたかというと…宮本浩次をご存知の方でしたら、言わんとしていることはなんとなく汲んでくださることでしょう。

葛飾北斎が「北斎漫画」を発行したのが、ちょうど55歳の頃かと思います。これは画手本集のような冊子で、庶民の営みや動植物、職業や道具などを描いたもので、大ベストセラーとなりました。

宮本浩次も54歳でソロ活動の一端、カバーアルバム“女歌”「ROMANCE」を発売し、彼の念願であったヒットチャート1位を獲得しました。

さて、本来であればソロアルバム「独歩」のリリースツアーが、行われるはずだった2020年でしたが、コロナ禍で中止を余儀なくされました。

この間も「P.S. I love you」「sha・la・la・la」とソロ曲を増やし…ある意味、ソロライブに必要な曲数がまとまった段階で、6月12日(土)に『宮本浩次縦横無尽』ソロライブが実現しました。

私は「独歩」ツアーにはエントリーしていませんでした。LIVEをやるにはソロ曲数が少なく、エレファントカシマシでの楽曲をやらざるを得ないだろうと、予想できたからです。

エレカシメンバーでないバンドで再現されても、自分には全く響いてこないと容易にわかったし、そんな気持ちでエントリーし仮にチケットが取れたとしても、演者や純粋な宮本ファンに申し訳ない気持ちがあったからです。

そして、今回の縦横無尽ですが、カバー曲と新曲を合わせればソロライブとして成立しそうでしたし、歌手・宮本浩次はどんなライブステージを目指したのか?それを検証する好機と考え、まさか当選するとは思わずに(笑)一応、FC先行にエントリーしました。

f:id:yumcha_low:20210614083434j:plain

宮本浩次縦横無尽

東京ガーデンシアターは初めて行く会場でした。収容人数8000人という大型施設ですが、客席の配置に工夫がありどの席からも見やすい設計でした。

2F部分がアリーナ席、3Fがバルコニー1、4Fがバルコニー2、5Fがバルコニー3となっています。私は4Fのバルコニー2の中央左側ほぼ最後尾の席でした。偵察感で来た私にとっては好都合な席ですね(笑)

私はソロ曲をほぼ購入していません。MVなどで数回聴き流しているだけでした。つまり、事前学習ゼロで行ったので、生歌がどこまで響くかが勝負といえました。

歌手・宮本浩次のデビューコンサートです!(ロッキンの渋谷社長も言ってましたw)まぁ、それにしてはバンドメンバーには小林武史(key・バンマス)、名越由貴夫(Gu)、キタダ マキ(Ba)、玉田豊夢(Dr)という、ツウの人たちに言わせたら、かなりの豪華メンバーを引連れてのデビューコンサートです。

【セトリ】

  = 第1部 =

  1. 夜明けのうた
  2. 異邦人 [久保田早紀]
  3. 解き放て、我らが新時代
  4. going my way
  5. きみに会いたい-Dance with you-
  6. 二人でお酒を [梓みちよ]
  7. 化粧 [中島みゆき]
  8. ジョニーへの伝言[高橋真梨子
  9. あなた [小坂明子]
  10. shining
  11. 獣ゆく細道
  12. ロマンス[岩崎宏美
  13. Do you remember?
  14. 冬の花
  15. 悲しみの果て [エレファントカシマシ]
  16. P.S. I love you

    = 第2部 =
  17. passion
  18. 明日以外すべて燃やせ
  19. ガストロンジャー [エレファントカシマシ]
  20. 今宵の月のように [エレファントカシマシ]
  21. あなたのやさしさをオレは何に例えよう [エレファントカシマシ]
  22. 昇る太陽
  23. ハレルヤ
  24. sha・la・la・la

  =アンコール=

 新曲

ソロ歌手・宮本浩次の歌謡ショーでした。

バンドマンは粛々と演目を演奏し、歌手は歌うというしっかりとした流れの構成です。そもそもエレファントカシマシのライブではないので、それと比較するつもりは毛頭なく、歌係がその役目を果たすコンサートというものを一度、体験するべきだと考えていました。結果、行ってよかったと思いました。

感想は一流のバンドは岩のごとく動きません。歌手はそれに合わせて唄うのみです。その日の気分や忖度は一切ありません。これは宮本にとって楽なのか?苦行なのか?(笑)でも、修行であることには違いないです。

演出は歌謡ショーらしく、ド派手でゴンドラも登場し、花吹雪、ミラーボールもでました。ゴンドラに乗ってせり上がってきた時は、ちょっと可笑しくて笑っちゃいましたが、「なるほどなぁ~」と感じました。

スクリーンに映し出される曲に合わせたデジタル画像にも、そうとう費用が費やされたでしょう…。舞台演出は児玉裕一さんだったね!これまた豪華。とてもかっこよい演出でした。

そして、あえて言わせてもらうなら…。

唄は…唄う癖やこれまでの歌唱法から抜けていない感が否めませんでした。歌唱法はもっと変化があってほしかった…。バンドの音が際立つほどに唄が追いついていない…そんなイメージです。

選曲に小林武史さんがプロデュースしたアルバム『ライフ』から「あなたのやさしさをオレは何に例えよう」をもってきたことには、腑に落ちる部分はありましたが、エレファントカシマシの代表曲を3曲入れてきたのには、意図があったとしても何も響いてきませんでした。

あの「ガストロンジャー」でさえ、パブロフの犬にならなかった。むしろ脱力したし(笑)頭の中はクエスチョンだらけでした。

あの3曲を入れてきたことで、宮本の勝負する気持ちが、弱腰だったと感じてしまったのです。あれはいったい何アピールだったのだ?

小林武史プロデュースタイムで、アルバム『ライフ』の曲をやったほうが、まだ自然だし聴きたかった。「普通の日々」「暑中見舞─憂鬱な午後─」で、よかったのでは?ちょうどライフの頃も宮本はソロのような活動をしていたらしいので、違和感はこれほどまでに抱かなかったでしょう。バンドの演奏は素晴らしくてもそこに注入される、ボーカルの魂は正直何も感じなかった。

f:id:yumcha_low:20210614101527j:plain

終演1

エレファントカシマシのライブには「今日は一体、何がおこるんだろう」という期待感でワクワクドキドキしますけど、今後もソロコンサートが開催されるのであれば、おそらく“安心・安定”のコンサートが期待できます。

回を重ねるごとに何か進化があるのか?演出の変更はあっても進化には期待度は低いでしょう。なので、一度行けばいいかな…という結論に達しました。

但し、このソロ活動をエレファントカシマシにどう還元するのか?と考えた場合、やるのかどうかわかりませんが、彼らのライブには大きな進化が期待できます。というか、エレカシメンバーはそのくらいに、スキルアップと対応力が必要です!

宮本がメンバーを信頼して歌える演奏が求められるでしょう。私は安定してほしいなどこれっぽっちも思っていません。なぜなら宮本がエレカシに戻れば、その日の気分が炸裂するでしょうし、そこが魅力の一つであり、醍醐味のようなものですから。

ソロ活動は宮本浩次が描いた芸能人“歌手”の華やかな部分を、体験したかったのか?歌手としての力試しがしたかったのか?エレファントカシマシを立て直すための活動なのか?エレファントカシマシが解散せず残してあるのは、そういう意図があればこそと信じます。

今は「今だから」彼がやってみたかった「夢」のひとつを実現したということです。彼の人生に他人がとやかく言えません。

私は宮本浩次のソロ活動も“有り”だと思っていた方です。想像していたのとは違うけど(笑)なので、全く否定的ではありません。

ただ、エレカシファンはそこに、エレカシでの活動に還元した姿を期待してしまうのは、致し方のないことでしょう。

f:id:yumcha_low:20210614102436j:plain

終演2

冒頭で葛飾北斎の話を出しましたが、北斎もまた55歳から稀代のパフォーマーぶりを発揮し、72歳で『富嶽三十六景』を発表するまで、精力的に旅をして、画力に探求した創作をします。富士山が大好きで75歳で『富嶽百景』を刊行しています。

北斎は描写が得意で、人のアイデアを上手にパクるのも得意でした(笑)。本来、絵の才能に長けていましたが、世の中でヒットしたアイデアを自分の作品に落とし込んだ作品が多かったのです。

やっぱりなんとなく宮本浩次と重なりませんか?(笑)宮本は自分を“世界屈指”の歌手だと信じて疑っていません。北斎のように探求心と努力を失わなければ、名実ともに世界屈指になれるでしょう。

彼が72歳になるころに誰もが唸る“名作”を生みだすのかもしれません。そんな妄想劇場が私の頭の中では展開しています。

宮本浩次のBirthdayソロコンサート宮本浩次縦横無尽』は、大成功で終演しました。会場に来た人、配信で視聴した人、さまざまな感想や思いが見受けられましたが、そのどれもが各々の正解ですよね。

ただ、その全部は宮本浩次の本意ではないでしょう。だから、ファンとしては今後の活動は見守っていきたいし、多くの期待を寄せて行きます。