「名盤ライブ」Vol.3 佐野元春『Sweet 16』
『Sweet 16』との出会い
1992年7月にリリースされた『Sweet 16』は、「佐野元春の新章」となった記念碑的な作品だ。当時アルバムチャートの2位を記録。TV出演などもあって『Sweet 16』から佐野元春を知ったファンも多い。
その1人が私です(笑)
厳密に言うと次にリリースされた『The Circle』からなんですけどね。ファンになって最初に買ったアルバムが、『The Circle』とこの『Sweet16』の2枚で聴き始めたのが、『Sweet16』からでした。
これはLIVEヴァージョンですけど、いきなり雷鳴が轟きどこかへ先導されていくような、パーカッション?(音楽や楽器に詳しくない💦)がなり始め、元春はいきなり「ミスター・アウトサイド償いの季節さ・・・」って歌い出すわけです(笑)
それまでの私は抒情詩のような曲ばかり聴いてきたので、風景とか場面とか想像しやすさがあって、いわゆるわかりやすいポップスしか知らなかったんですよね。
佐野元春の初期曲にはそういう感じの作品はあるんだけど、あくまで“そういう感じ”ってだけで、なんか・・・この曲の場所ってどこなんだろう?って(笑)
東京じゃないけど都会で、田舎なんだけど日本じゃないみたいとか(笑)そういえばMVを始めて取り入れたのも、元春ではなかったかな?それを見ると曲のイメージが具現化されてるのが伝わったりしました。
この「Mr.OUTSIDE」なんかもこのLIVE動画を見て、イメージにはまる感じがしました。言葉では説明のつかない、けれども心を見透かされているような、葛藤とか迷いとか救いとか・・・1曲目から「なんじゃこりゃー!」ってなった記憶があります。
「名盤ライブ」Vol.3 佐野元春『Sweet 16』
15:00 KT Zepp Yokohama
あれから1カ月経ってしまいました💦
私は初日の“KT Zepp Yokohama”15時の回に行ってきました。あの日は朝から冷たい雨が降っていました。
はじめて行くZeppで晴れていれば、いろんなところを見て周ろうと思っていたのですが、心折れて開場時間を少しずらして行きました。
同じことを考えていた方多かったのか?入場に手間がかかるからか?列はかなり長くなっていました。
「名盤ライブ」は再現LIVE企画としてこれまでに3回行われていて、元春は2013年第1回目に『SOMEDAY』でも行っている。3回中2回も!
SONY Musicが主催だから、たくさん名盤は出ているでしょうが、“再現”となるとそう簡単にはLIVE化できない…と、思うのでこの2回開催っていうのはすごいことだと思います。
『Sweet16』のリリースから30年・・・ですよ?なんかもう想像ができなくて💦最も想像つかないのがこのアルバムには、11曲目の「エイジアン・フラワーズ」にジュリアン・レノンとオノ・ヨーコが参加しているし、12曲目の「また明日…」には矢野顕子が参加している・・・。
矢野さんはワンチャン日本に来てもらえたら実現可能ですが、ジュリアン・レノンとオノ・ヨーコは無理ですよね(笑)
で、この2曲に関しては、コーラスの佐々木久美さんとTIGERさんが、とても素晴らしい仕事をしてくれたと感じます。
セットリストは再現ライブなので、『Sweet16』の曲順通り・・・です。
- ミスター・アウトサイド
- スウィート16
- レインボー・イン・マイ・ソウル
- ポップチルドレン
(最新マシンを手にした陽気な子供達) - 廃墟の街
- 誰かが君のドアを叩いている
- 君のせいじゃない
- ボヘミアン・グレイブヤード
- ハッピーエンド
- ミスター・アウトサイド(リプリーズ)
- エイジアン・フラワーズ
- また明日…
天使が陽気な声で笑ってる
ヒナギクはせつなげに風のなか
コマドリはセンチメンタルに唄ってる
悲しい気持ちが消えてゆく
それは君だった
それは君だった
ミスターアウトサイド
このアルバムは初めての育児をワンオペでしていた私に、希望を与えてくれました。
特に衝撃をうけたこのオープニングは、頭の中が生活の風景でぐるぐる渦を巻いたようになって、幸せなはずなのに“悲しい気持ち”に陥っていた私に光を見せてくれました。
そこからの!「スイート 16」のこの出だしから
日曜日は少しだけ涙をこらえて
彼女のために野バラの蜜を集めるよ
世界地図を広げて
行きたい場所に印をつけたら
すぐに出かけるぜ
って・・・、日曜日すら家にいない夫・・・まぁ、家族のために“野バラの蜜”を集めに出ていたと言えばそうですが・・・(笑)たまに家にいても疲れて動けないし・・・。そして終盤の
みえすいたこの幸せに
瞳を閉じてけりをつけたら
すぐに出かけるぜ
私に勇気をくれました・・・“夫なんてかんけーない!行ってまえ!”と(笑)。
そして、「レインボー・イン・マイ・ソウル」は私を後押ししてくれた曲で、子供と2人だけで動物園や遊園地にも行ったし、買い物もバスに乗って出かけました。行きたい場所にすぐに出かけました(笑)
あせらずにゆくさ
何も迷うことはない
失くしてしまうたびに
君は強くなる
ああ...
輝き続けている いつの日も
あの頃の私にはこのアルバムは“幻想”のような世界観で、“生活感”が一切なくて、26歳だった私にとって、まだ記憶が新しい10代の思い出、別れた恋人の思い出そんなものを思い出させました。
それは美しいのだけど残酷で、“こんなはずじゃなかった”と考えさせもしました。ある意味、私を解放させた部分もあり、心の扉に鍵をかけた・・・そんな感じもありました。
今聴くと本当、いろいろあったからこそ“強くなれた”と実感します(笑)
「ポップチルドレン」
君は3個のダイヤモンドを掘りあてて
そして4個のダイヤモンドをなくしてしまう
やがて眠たげな太陽が色褪せたとしても
君は大丈夫さ It's gonna be alright...
26歳の私を言い当てていた感じがして、まだ根拠のない“It's gonna be alright...”が生きていた時でした。
「廃虚の街」、「誰かが君のドアを叩いている」が、言い表せないあの頃の私の心境に近いリリックだとしたら、56歳になった私がこのアルバムの完全再現ライブを体験したら・・・。ライブで聴ける至福になっていました(笑)
でも、あまりの再現力に「君のせいじゃない」で涙がこぼれそうになりました。“大丈夫!十分、幸せになりました”と言えることと、その場にいられた幸せをかみしめて!
でも、さすが「ボヘミアン・グレイブヤード」で現実に引き戻してくれるというか、これがあったから見失わずに生きていけたというか、さすが!な流れです。
いつの頃からか
窓辺にもたれて
遠い君の記憶ばかり
追いかけて
雨の中
僕はどこにでも行けるさ
けれど僕はどこにも行けない
青空を見上げて
Gee Bop Do be Do...
冷たいブルーベリーワイン
シナモンチェリーパイ
まるで夢を見ていたような気持ちだぜ
今でも現実逃避しそうな時はあるけど、こうしてライブに出かけて発散して日常にもどれるメンタルになれたと、再確認できました。
「ハッピーエンド」はアレンジを変えて今でも演奏されますが、本当に好きな曲でこの「ボヘミアン・グレイブヤード」のあとに聴くことで、安心感を与えてくれたという感じです。
このアルバム『Sweet16』には“夢”というワードが18回出てきて、壊れた夢、こだわり過ぎた夢、きれいな夢・・・とにかく、16歳の少年少女は“夢”に溢れているっていうのが、アルバム全体に感じるのですが、どの年齢になっても感銘できる曲が「エイジアン・フラワーズ」と「また明日...」だと思います。
この2曲は今では珍しくない“feat. ”曲ですね。世界進出している2人の女性、オノ・ヨーコと矢野顕子がfeaturingしています。
経緯はわからないのですが、佐野元春のお2人に対する「敬意」がこのfeaturingに繋がったのでしょう。そして、おそらく全女性に対しての「敬意」がこの曲に込められている気がします。
「エイジアン・フラワーズ」はまさにオノ・ヨーコのことを歌っていると感じ、当時はそういう“賛歌”なのかな?って思っていましたが、今聴くと女性が思い描く自由な発想が、世界を動かす時代になったと聴くことができました。
「また明日...」は好きすぎて、このブログ名にもしたくらいで(笑)心身ともに元気でいれば、明日はくるし“また明日...”って言える幸せを忘れちゃいけないと思った曲です。そして、男性が女性をエスコートするという風潮の時代から、共に歩いて行く時代を感じさせた曲でした。
“永遠の少年少女”達と私
“再現”性が信じられないくらいに素晴らしいもので、まるで本当にCDを聴いているような感じでした。だがしかし、やはりプラス30年のキャリアが加わると、何か違うパワーが加わるんですよね。
リアルタイムでLIVEに行っていない私は、CDの再現力に絶賛を感じていましたが、当時を知っているファンは“再現以上のパフォーマンス!”と大絶賛でした。
たしかにそうです!本当にそうです・・・。まだまだ、私も浅い💦
特典のTHE BOOKにはアルバムの思い出を寄稿しました。書ききれない思いはこのブログ記事で補っています(笑)
“永遠の少年少女”が元春ファンには多くいますが、無邪気なままじゃいられない、世知辛いのが現実なので、元春の楽曲から元気もらったり、後押しされた人も多いでしょう。
私にとって『Sweet16』はちょっと辛かった時期から、進むきっかけをくれた大切なアルバムです。
そして、これからも“懐かしむ”アルバムではなく、その時の自分で聴くとどんなイメージになるのか、楽しみになる名盤です。
おそらくそれが“心の少年少女に。”というキャッチフレーズのアルバムなのでしょう。